近視の治療
近視の治療について
強い近視は視力障害、黄斑変性症、緑内障、網膜剥離といった様々な眼疾患に繋がる恐れがあります。
近年の日本では、近視に該当する学童の数は増加傾向にあり、全体の60〜80%が近視、15〜20%が高度近視にあたります。学童期の近視は、主に眼球自体の長さが伸びることが原因で進行します。
当院では、近視の進行を抑制するための治療を実施しております。
オルソケラトロジー治療
オルソケラトロジー治療とは、目の表面(角膜)の形を平らに矯正する特殊なコンタクトレンズを就寝時に装着する治療です。これにより、目に入る光は正確に焦点を合わせられるようになり、日中は裸眼で過ごすことができます。近視や乱視を矯正する治療法の1つとして実施されてきましたが、2004年に近視の進行を抑える効果が判明して以来、国内外でさらに脚光を浴びるようになりました。
角膜の形が変化し、目の中心以外から入った光の焦点が網膜より後ろに後退することが少なくなるため、近視抑制の効果が現れるのではないかと推察されています。
当院では患者様一人ひとりのご状況を丁寧に確認した上で治療を実施いたしますので、ご興味のある方はまずはご相談ください。
オルソケラトロジー治療の適応について
オルソケラトロジー治療に用いるコンタクトレンズは通常のものと特性が異なり、治療には制限があります。
特に以下に該当する方は、医師の診察によって本治療を実施できない可能性がございます。ご了承くださいませ。
- 本治療では矯正が難しいほど強い近視・乱視に該当する方
※当院ではおおよそ-4.0D以上の近視または-1.5D以上の乱視がある方への治療は推奨いたしません。 - 遠視に該当する方(オルソケラトロジーでは矯正不可能です)
- 妊娠・授乳中の方、または妊娠予定のある方
- 他の眼疾患によりコンタクトレンズが装用不可能な方
- 未成年で、保護者様の同意がない方
- 医師の説明が理解できないなど、レンズ管理が不可能な方
- 不規則な勤務時間などで、夜間の睡眠時間を確保できない方
- 本治療が許可されていない特殊な職業の方(パイロットなど)、常に良好な視力が必要とされる職業の方
オルソケラトロジー治療のメリットとデメリット
メリット
- 裸眼での生活が可能になる
- 近視の進行を抑制する効果が期待できる
- 途中で治療を止めれば元の状態に戻ることができる
- 風呂・スポーツ・化粧などが裸眼でできるようになる
- コンタクトレンズ着用時に使用できなかった目薬が使用できる
デメリット
- 視力の安定までに時間を要する(約1週間程度)
- 強い近視や乱視は矯正不可能である
- 細かい度数調整は不可能である
- 日内変動があり、夕方に視野がぼやけることがある
- 光が滲んで見える場合がある
- 毎日装用しなくてはならない
- 年配の方の場合、手元が見づらくなる
- アメーバや緑膿菌感染症が発生しやすいという報告がある
- 眼疾患のある方には治療が実施できない
マイオピン治療
マイオピンという点眼薬(目薬)を1日1回寝る前に使用することで、子どもの近視の進行を抑える効果が期待できます。
マイオピンはアトロピンを0.01%配合した点眼薬で、シンガポール国立眼科センターの研究に基づいて開発されました。もともとアトロピン点眼は検査やぶどう膜炎の治療などの目的のため、1%製剤が使用されていましたが、学童期の近視の原因である眼球の前後方向への伸長を防ぐ作用が注目され、盛んに研究が行われました。
しかし、瞳孔が開き続けて眩しさや不快感や、ピント調節機能の麻痺により作業や読書が難しくなったり、アレルギー性結膜炎や発熱の副作用があったりと、様々なデメリットによって実用化には至りませんでした。
時を経て1999年、アトロピンには低濃度であっても近視の抑制効果が期待できることが判明しました。2012年には大々的に臨床試験も実施され、低濃度のアトロピンには近視抑制効果が確認できたほか、副作用の減少により実用化を図れるという結果を得ることができました。
近視を抑制することが大切な理由
学童近視の多くは、眼球が前後方向に伸長しピントが合わなくなることを原因としています。近くを見続ける生活が続くと眼球が伸長し近視となり、一度伸びてしまったら元に戻すことはできません。そのため、近視の進行を抑えるには眼球の伸長を止める必要があるといえます。マイオピン(低濃度のアトロピン)には、眼球の伸長に影響するムスカリン受容体を遮断する効果があるとされています。
マイオピン治療の適応について
以下の子どもが対象となります。
- 6~12歳の学童
- 軽度または中等度の近視の子ども
- 2年以上治療の継続ができる方
- 1~3ヵ月毎の定期通院ができる方
マイオピンの特徴
- 近視の進行を平均60%抑制するとされています。
- 近見視力の低下にほとんど影響はなく、累進屈折眼鏡もいりません。
- 目の遠近調節機能にほとんど影響はなく、手元を見る作業も問題なく可能です。
- 日中の光で感じる眩しさに支障を来さず、サングラスもほぼいりません。
- 毎日就寝前に1滴点眼するだけで、簡単に治療を進めることができます。
- 目薬(1本5ml)は両眼点眼用で、1ヶ月で使い切れる容量です。
- 点眼薬はGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)に準拠した工場で製造されています。
治療のスケジュール
治療をご希望の場合、まずはご来院いただき検査を実施の上、治療に関するご相談をいたします。
※念の為、保険証・医療証をお持ちの上ご来院ください。